【こんな症例も治りますシリーズ 792】 『 連続する嘔吐のワンちゃん 』も適切な診断と治療で治します

↑ 上の写真は、ワンちゃんの異物を食べて小腸に閉塞した事で、腸管とその周囲から出血が起きている様子(試験開腹手術の写真)です。

 

 

頻回の嘔吐で来院したトイプードルくん ―お腹の中で起きていたこと―

 

 

犬 トイプードル 8歳 オス(去勢手術済)

 

 

 

【 数日前から何度も嘔吐を繰り返しており、ごはんもあまり食べられない 】とのことで来院されました。

 

 

 

 

◆◆ 元気があるように見えても、嘔吐が続く場合には注意が必要です。

 

 

 

 

 

◆◆ 診断の流れ

 

 

■ 問題点リストを整理するために、ミニマムデータベースに必要な数種類の検査を行いました。

 

 

■ 超音波検査(エコー)で、小腸の中に『 異物のような像 』が見つかりました。

 

 

■ 食べ物やおもちゃの一部などが消化管内に詰まると、嘔吐が続いたり、腸が傷ついたりすることがあります。

 

 

■ このため、全身麻酔下で試験開腹(お腹を開けて確認する手術)を行いました。

 

 

 

 

◆◆ 手術の様子

 

 

■ 腸の中にはすでに異物はなく、おそらく手術前に自然に通過していたようでした。

 

 

■ ただし、腸の表面には赤く炎症が広がっており、出血や浮腫も見られました。

 

 

■ そのため、腹腔内洗浄(お腹の中を生理食塩水で丁寧に洗う処置)を行い、感染や癒着を防ぎました。

 

 

 

 

◆◆ 術後経過

 

 

■ 手術後は嘔吐もなく、翌日には元気に流動食を食べてくれるようになりました。

 

 

■ 腸に強い炎症が残っていたため、抗生剤と整腸剤を使いながらしばらく様子を見ましたが、その後も順調に回復しています。

 

 

 

 

 

◆◆ 飼い主さんへのメッセージ

 

 

■ ワンちゃんの『 嘔吐 』は、消化不良などのこともありますが、ときには異物や腸閉塞のサインであることもあります。

 

 

■ 異物が通過しても、腸に炎症や感染が残る場合があるため、一見落ち着いて見えても、繰り返すときは経験豊富な動物病院での早めの検査をおすすめします。

 

 

 

 

◆◆ まとめ

 

 

■ 今回は、異物が自然に出てくれて本当によかったケースです。

 

 

■■ このワンちゃんの試験開腹手術の意味合いは、『 長時間異物が腸管に閉塞していると、腸管が激しく損傷して、最悪の場合“壊死”になって穴が開き、食べ物が漏れて腹膜炎などになる可能性があるので、直接消化管を目視して異常を確認する 』目的です。

 

 

■ 早めの受診と丁寧な処置が功を奏しました。 私たちも、『 ワンちゃんが本当に快適に過ごせるように 』を第一に考えて治療にあたっています。

 

 

 

 

 

獣医師 伊藤雅志

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